冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「まぁ、落ち着けって、今回の視察だが……企画部にプラン実体験の報告と合わせて改善、要望をまとめたやつを中心に報告会議にかけるぞ」

「はい」

あっさり仕事に切り替わって、私は渋々腰を戻した。

「これから真面目な話をするから、耳の穴かっぽじってよく聞けよ?」

「わかりました」

安西部長の顔から笑みが消えた。私もそれに心して聞く態勢になって背筋をピンと伸ばす。

「この報告会議の結果次第で、俺はお前を広報部の主任に推薦しようと考えている。まぁ、実際の着任は来年だが……」

しゅ、主任に? 私が?

これは寝耳に水な話だ。

広報部の主任だった社員が半年前に退職し、まだ後任が決まらずずっと空席になっている。主任になれば、プロジェクトが立ち上がったときにリーダーとなってみんなを引っ張っていくことになる。もし、そうなれば夢のような話だ。

「けど、どうして私なんですか? 柊さんだって私と同期だし、仕事だってできる人じゃないですか……」

健一は次期主任と噂されていて部署の全員から期待されている……それなのに、なぜ?

「そうだな……確かに柊は、仕事はできる。けど、ここだけの話だが……まぁ、元交際相手のお前には聞く権利はあるだろうな」

安西部長は意味深な言葉を口にすると、深くため息をついて背中を背もたれに預けた。
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