君のそばにいさせて
#4
夏休みがこんなに長いなんて思わなかった。


受験生として
高校三年最後の夏は、一人・・・だった。

静かな教室には
静かに古典の問題解説をしている先生の声
テキストをめくる音
文字を書く音
冷房の音・・・
それだけが響いている。




夏休みになってすぐ
夏期講習も始まったけれど、
遊馬くんとは、コースも違うから会うことはなかった。

自習室で勉強をしている姿を見かけることはあったけれど、
邪魔になると思って声をかけなかった。

ううん。
違う。

怖くて声をかけられなかった・・・。


<<しばらく離れよう・・・>>


けんか別れみたいになって
そのまま。


自分から距離を置きたいっていったのに
遠くからでも視界に入れは、
胸が苦しくなる。


触れたい
そばにいきたい

悲しくて

泣きたくなる。




あの時・・・
ことばが止まらなかった。
感情と理性とごちゃ混ぜで
自分でも何を言いたいのか
伝えたいのかわからなくなりながら
必死で言葉をつなげていた。

ただ伝わってほしい。
ただ、、、、わかってほしい。

それだけ・・・しかなかった。



直接、遊馬くんから進学のことを聞けなかったこととか
なんで田中さんから聞かされないといけなのかとか・・・
なんで私に直接いってくれなかったのかなとか・・・。
 なんで?

なんで?

なんで?

そればかり考えていた。


「・・・・・・・」

あたりまえに隣にいた存在がいないことが
こんなにも不安にさせるなんて・・・。


<<なんて言えばいいかわからなかった>>

わかってる。
遊馬くんがそう考えただろうということも。

優しい遊馬くん。


きっと、大学が違うとなればわたしが不安になると思ったのかもしれない。

遠距離になること・・
遊馬くんは無理だと思っているのかな。

そのうち、そのまま、連絡もとらなくなって
いつのまにか自然に、、、ってなってしまうと思っているのかな。


<<距離とか時間とか考えなかった?>>
これからのこと考えたとき、
考えたよ。
わたしだって思わないわけない。
不安がない、、わけじゃない。



遊馬くんはかなりびっくりしていた。
わたしが知っているなんて思わなかったんだろうなぁ。

きっと、わたしには永遠に知られないようにするつもりだったんだろうなぁ。

こうして
わたしに考えさせないように。


優しいのか、それとも、残酷なのか。よくわからない。




ふと、窓の外を見ると、愛おしい人が歩いていた。

もうすぐ大きな大会があるから、まだ引退はできないって、前に聞いたことがある。

夏休みは、夏期講習と部活の練習であまり遠くまでお出かけできないかもって言われていた。

<<夏休み、一緒に勉強しましょうか。>>

<<うん!>>

遠くに行かなくても、二人でいれたら、
遊馬くんがそばにいてくれたらそれでいいと思っていた。

夏休みに入る前も学校で
遊馬くんは何度も私のそばに来たけれど、
私が理由をつけて避けていた。

放課後も遊馬君の練習が終わる前に帰った

そのまま、夏休みに入ってしまったから
ますます、私と遊馬くんの距離を広がってしまった。

帰りも一緒じゃないし、クラスでも会話もしない。

あげくに私の落ち込みよう・・・。

いつもと違う私にゆいちゃんは心配して声をかけてくれたけど
理由はいえなかった。

私は、どうしたらいいのかわからないままでいた。

< 15 / 45 >

この作品をシェア

pagetop