君のそばにいさせて
長い長い夏休みが終わって学校が始まった。

遊馬くんは、休み時間になるとどこかへいってしまって、授業が始まると戻ってくるということが続いていた。

二学期の始業式で
遊馬くんはインターハイで優勝したと聞いた。

体育館の壇上に上がる遊馬くんはとても、まぶしかった。

<<インターハイ、見にいってもいい?>>

そんな約束を交わしていたけれど、結局叶わなかった。

まるで、、約束なんてなかったかのように

わたしのスマホには
メールも着信も、なにも連絡はなかった。


<<このまま、連絡がなくなっていつのまにか>>

自分で言ったことが現実になろうとしているなんて、皮肉だなぁ。

遊馬くんの机はまた、空席。
またきっとどこかへいっているのかな。



ゆいちゃんにも励まされて
何度か、声をかけようかと思った。
でも、放課後になると、マネージャーの田中さんがずっといて、二人で仲良く話もしていて
遊馬くんの隣に私の居場所はないんだなぁって。
そう思ったら怖くて話すことができなかった。

それに、自分から距離を置きたいと言った手前、素直になることもできなかった


無気力なまま毎日過ごして、
でも、現実はもう進学のことも本格的に決めないといけなくなってきて。


私はどうしたらいいのか。
進学もどうしたらいいのか悩んでいたとき、
美術部の顧問でもある、美術の田中先生から声をかけられた。

絵画コンクールに出してみないか?と。
ここで、認められたら美大の推薦が取れる。
チャレンジしてみないか?と言われた。

遊馬くんと、お付き合い始めたとき
遊馬くんに私の絵が綺麗だと褒められたことがあった。
私の色彩とか、感覚が、好きだと。

遊馬くんに褒められたのが嬉しくて、それからもっと、絵が好きになった。

「わたし、頑張ってみます」


< 16 / 45 >

この作品をシェア

pagetop