君のそばにいさせて
「森山!いたんだ。」
「あっ?」
「いたんだよ、彼女が!」

中学三年の俺たちは、夏休み利用して、志望校の見学説明会に参加していた。

まだ志望校の決まらなかったけれど、とりあえず通える範囲の高校の説明会には参加していた。

夏休み中、最終日曜日。

俺と遊馬は近くの公立高校へ見学に来ていた。

ここは、県内でも有数の進学校だし、レベルも高い。

学校生活も魅力的だった。

最後の大会で俺も遊馬も陸上で記録を残したこともあり、スカウトも来ていたしスポーツ推薦の話もあったけれど、遊馬はいまいち、のりきではなかった。


朝はどうでもいいような顔していたのに、なんだこの変わりよう?

「彼女?だれ?」
俺の彼女なら違う学校の説明会のはず。

だれの彼女?

「ほら、前に話ししたじゃないか。陸上大会で会った子がいるって」


遊馬らしくない、やけに興奮している。

「あー、そういえばそんなこと、聞いていたなぁ」

ふと、遊馬が話ししていたことを思い出す。
遊馬の気になる女の子は、俺たちの少し先を歩いていた。

4人の女の子グループの1人。

大人しそう。
物静か。
そして、
年齢にしては幼いような、可愛らしい子だった。



それが第一印象だった。


遊馬が気になる子。

最初はそれだけだった。
あの遊馬が異性に関心がある。その対象として、俺も興味があっただけだった。

それがいつの間にか
遊馬の視線の先に、森本さんがいて、
森本さんも遊馬を見ていることに気がついて。

そして、俺もいつの間にか森本さんに視線を奪われていた。

森本さんを、追えば追うほど、どんどん引き込まれた。

絵が好きなこと
卵焼きが好きなこと
クリームパンが好きなこと

青空が好きなこと

数学が苦手なこと
あまり羽目を外さないこと

そして



佐倉遊馬を好きなこと。

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