君のそばにいさせて
「佐倉先輩」

4時間目が終わって教室がざわめいているなか、教室の後ろの入り口から声が聞こえた。
振り向くと
「田中さん」

私が気が付くより早く、遊馬くんの声が聞こえた。

陸上部マネージャーの田中さんの姿があった。

廊下で二人で話している姿を見て、胸がわしづかみにされているかのように
苦しくなる。

笑顔の二人・・。
話している内容が気になる。

ちらちらとつい気になって二人を見てしまう。

「・・・・・・」
「!!」

遊馬くんと話している田中さんと一瞬、目があう。
すぐに目をそらして
美術室へ行くため、お弁当を手に持つ。

心臓が飛び出そうなくらいドキドキしている。

二人の姿をみるのがつらくて
嫌で・・・。
苦しい・・。

呼吸するのもうまくいかなくて頭がくらくらしてきた。

はやく・・・美術室いきたい。

ここから離れたい。

ガタガタ・・

あまりにも慌ててしまって机に体をぶつけてしまい
大きな音が響いた。
ちょうど、お昼休みということもあって、注目はあびなくてすんだ。
けれど・・
体勢を崩して視界がぐらっとした。

「大丈夫?」
転びそうになったところを抱きかかえてくれたのは・・・
「森山くん」

斜め上を見上げると
森山君が安堵の表情をしていた。

「びっくりした。けがしてない?」
「う、うん・・ありがとう」


ちょうどこれから美術室いこうと思っていたんだ。
一緒に行こう・・。

森山くんに誘われて教室を出ようとしたとき、遊馬くんと目があう。
そして・・視線をそらされた。

こんなこと、当然のこと。

そして、
やっぱりわたしはあの人の隣にいた居場所なんてないのだと思った




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