曇天はいつか晴れ渡る
胸がズキンと痛んだが、内心ホッとしている自分がいて気持ちの整理が追い付かない。
帰りの車の中で母は必要なものがあるかの確認以外、言葉を発さなかった。
家に到着するまでの間、私はずっと曇天を眺めていた。
車から流れるFMが場違いの陽気な音楽を選曲して、より一層気分は落ちていく。
「いい?駅に着いたらロータリーまで行って黄色の車を探しな。」
週末の日曜日、家から近い駅まで姉に送ってもらい、リュックとキャリーケースを
降ろすと姉は珍しく私の目を真っ直ぐ見て言い放つ。
「里桜、いい加減あいつの事なんか忘れな。こんな状態じゃお母さんの体が持たないでしょ。」
姉なりに私を労わって投げかけた言葉だったのかもしれないが、
それは私にとって的外れなものだった。
返答をせずに改札をすり抜けると、ちょうど目的の電車が到着した所で難無く座ることができた。
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