不死身の俺を殺してくれ
「……うるさい」
シャワーを浴び終えた煉は、リビングの入り口に立ったまま、さくらの叫声を聞くなり、思い切り眉間にしわを寄せて不愉快そうにさくらを一瞥する。
さくらは下着姿の煉の大胆な姿を目撃し、恥ずかしさで慌てて正座している自身の太腿に視線を落とし、目蓋を閉じて抗議した。
「な、何で服着てないんですか!!」
この人には羞恥心ってものがないの!? どうして、そんなに他人の自宅で堂々としていられるのよ。
心の中で煉には直接言うことが出来ない、非難の言葉の数々が次々と湧き上がる。
「無いからだ。お前、俺の服をどこにやった?」
少し不機嫌そうな煉に問い返され、さくらはハッとした。そういえば彼がシャワーを浴びている最中に、服を洗濯機に放り込んでしまった。
「…………洗濯中です」
「何? 俺は着替えを持っていないんだが」
だって、と胸裏で言い訳をしながら、さくらは項垂れたまま猛省する。
余計なお世話だとは分かっていた。だが、煉の服の汚れが気になったさくらは、彼が着替えを持っていないことを失念したまま、服を洗濯してしまったのだ。
怖さと煉の裸を見た恥ずかしさが、ない交ぜになり今更ながらに冷や汗が全身から滲み出す。
どうしよう……。また、勝手なことをしてしまった。
そう思考している間に、煉がさくらの隣に腰を下ろした気配がして、顔を上げられないまま、びくりと小さく震える。
「仕方ない。今日はこのままで寝る」
「え? ね、寝るって……」
『寝る』という言葉に何故か過剰に反応したさくらは、思わず顔を上げ煉の方へと振り向いた。
まだ乾いていない濡れた髪の毛から覗く煉の鋭い視線と、羞恥で顔を紅に染め上げたさくらの視線が交差した。
一瞬の静寂。
「……え……」