不死身の俺を殺してくれ
「えっと……。取り敢えず、タオルが必要だよね」
無事に自宅マンションに辿り着いたさくらは、リビングに電気を灯し、改めて男の惨状を目の当たりにする。
先ほどまでは暗闇で、相手のことをあまり良く見えていなかったが、かなりの出血量だ。
これは、やはり無理矢理にでも病院に連れて行くべきだったかと、さくらは思案する。しかし、男は頑なに病院には行きたがらない。何か行けない理由があるのかもしれない。
血は蛋白質だから、お湯は駄目だよね。仕方ない。水で濡らしたタオルで拭くしかないか。
「冷たいと思いますけど、我慢してください」
さくらは、そう言うと水に濡れた冷たいタオルで男の乾いた血痕を拭い始めた。
「…………っ!」
「ご、ごめんなさい!!」
さくらに成されるがまま、床に横たわっている男は、痛みか冷たいタオルのせいなのか解らないが時折、顔を歪ませる。
そうして、時間をかけて男の顔等に付着している血痕を落としている間に、男の意識はすっかり眠りへと落ちていた。
そして、次は服が問題だった。これもかなり汚れている。しかも服は摩擦で破けたような状態だった。喧嘩等ではないとしたら、もしかしたら、この男は事故に合ったのかもしれない。
服を脱がすべきか。
さくらは恐る恐る男の服に手をかけて、すぐに思い留まった。いや、これ以上は止めておくべきだ。素人には手におえないだろうと。
これで、この男がこのまま本当に死体になってしまったら私が逮捕されるのかな?
あり得ない状況に、さくら自身も内心は酷く混乱していた。