世界No.1の総長と一輪の花 II
その人物は…
黒髪で、赤いピアスがきらりと光る
私のよく知る人物……
「……し…ゆ……っ」
思わず彼の名前を呼んだ。
震える声で…。
涙が溢れて、視界が滲む。
それでも彼の姿をよく見たくて、夢なんかじゃないと思いたくて……必死に涙を止めようとした。
それでも涙は止まらなくて、視界は滲んだまま。ただ、1人の足音だけが耳に聞こえてくる。
それから、
「わ、わかりました…!!この女は返します…っ!!だからっ……命だけは…っ」
宮園さんの震える声。
拘束されていた手首も離された。
バキッ!!!!!
鈍い音が部屋の中に響いて、ドサリと誰かが倒れる。
温かい体温が私に触れて、体を支えて起き上がらせてくれる。そして、包み込むようにぎゅっと抱きしめられた。
「…馬鹿花莉」
そう呟く声が聞こえてくる。
抱きしめる手に力を入れられて…涙が止まらない。