世界No.1の総長と一輪の花 II
夢じゃない。
本当に…本物の詩優なんだ……
…来てくれた……
「…ごめ……なさ……」
ちゃんと謝りたいのに…
まだ体が震えて、嗚咽のせいで余計に声が震えてしまう。
「…いいから…何も言わなくていいから。帰るぞ、花莉」
大好きな人のいつもより低い声。
だけど…どこか優しくて、安心するトーン。
私はこくんと頷いた。
詩優は私の体を離すと、パサリと黒い上着を肩にかけてくれる。
袖を通していない状態で、ファスナーを上までしめられた。
「…ちょっと待ってろ」
私の涙を指で拭ってくれたあと、詩優は立ち上がって…周りの男たちを睨んだ。
…あまりにも静かだったから…ここの部屋にはもう誰もいないと思っていたけど、数人の男たちは動けなくなっていたみたいでただ息を飲む音だけが聞こえた。
「今すぐ“水鬼”を解散させろ。それから…」
詩優はメガネをかけた男にゆっくり近づいて、持っていたスマホを奪う。それから何かを操作して、数秒後には足で思いっきり踏み潰した。