世界No.1の総長と一輪の花 II





車の中では、ただぼーっと窓の外を眺めていた。




そこで、目に入ったのは小さな雪だるま。
何年か前、私もつくっていたっけ。家の雪かきを手伝って、集めた雪で何個もつくった。お母さんや冬樹くんと一緒に…。




一生懸命たくさんつくった雪だるまが溶けてしまうのは寂しかったけど。
みんなでつくるのは楽しかった。





なんだかあの頃が懐かしいな…。





「雪だるま、つくりたいの?」





ずっと窓の外を眺めていて気になったのか、詩優は聞いてきた。私は向き直って、詩優と目を合わせる。





「…ううん。昔のこと、思い出してただけなの」


「聞いてもいい?」





詩優が優しく微笑む。
私はこくん、と頷いて。





「昔ね、家の雪かき手伝って集めた雪で雪だるまつくったなーって。
あ、あとね、そのあとにお母さんがおしるこ作ってくれたの。小豆がいっぱい入ってて美味しいんだよ」


「楽しそうだな」




「うん……あ、どうでもいい話だよね」


「いや、俺はお前のことを全部知りてぇから話してくれると嬉しいんだけど」





詩優の言葉に胸が熱くなる。


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