世界No.1の総長と一輪の花 II
勇悟さんはコーヒーを一口飲んでから、ゆっくり話し始めた。
「私はね、子どもたちにいい未来を歩んでもらうために、育てた…つもりでいた。間違った道に進みそうになったら厳しく叱って、私が用意した安全な道を歩かせていた」
厳しくしていたのは、詩優のためだということが伝わってくる。
「悠が亡くなってから…余計にそう思っていたのかもしれない。特に詩優には、厳しくしていたから。
でもね……恥ずかしい話だが、最近それが間違っているんだと気付かされたよ」
勇悟さんは私と目を合わせる。
「詩優はね、私がすることに抵抗はするが最後の最後で必ず諦めて従っていたんだ。前までは…。
跡継ぎになることも相当嫌がっていたのに、それを引き受けて。一人暮らしをする間になにかが変わったんだろうね。
婚約者を勝手に決めた時は、詩優は引き下がらなかったから」
婚約者が葉月さんに勝手に決められた、と聞かされた時は確かに詩優は何度もお父さんと話をつけてくる、と言っていたのを知っている。
「…それほど、妃芽乃くんのことが大切なんだろう。諦められないくらいに」