世界No.1の総長と一輪の花 II
「…詩優っ!」
袖を引っ張って呼んでも、まだこっちを見てくれない。
「詩優っ…!」
肩を揺すってみてもこっちを見ない。
…やっぱり怒ってるのかも……。
「ごめんなさい。本当は、葉月さんと2人にしたくなかったの。でも……勇気をだして頭を下げた葉月さんの気持ちを無駄にもできなくて……。
本当にごめんなさい」
ぺこりと頭を下げて、本当のことを言った。
けれど、詩優は私のことを見てくれず。
ほんとについさっきまで穏やかな気持ちだったのに、一気に悲しい気持ちになる。
「詩優っ…」
もう一度袖を引っ張ってみる。
すると、くるりと向き直って。
「ごめん。怒ってねぇから。ちょっとヤキモチ妬いてほしかっただけ」
私の両頬をむにっと優しく引っ張ってから、おでこにキスを落とされた。
それから瞼に、頬に、やさしいキス。
それから唇に…───
「車の中っ!!」
慌てて私は自分の口元を手で覆った。