四つ子の計画書
それから一週間が立ち、色んな噂を聞いた感じだと…、
解剖された双子がこの一週間のうちにいたそうだ。
ある男女の双子で、まだ幼い…小学校にすら入っていない双子が…。
夜中に泣き叫び、何かで殴るようなゴスッとした鈍い音で起きた双子の一人が、廊下をそろりと覗き込むと、
男女の幼い双子が頭から血を流し、だらりとした状態で、研究員の人に連れていかれていたそうだ。
正直、そんなのはただの噂にしか過ぎない。
だけど、嫌でも信じてしまう私がいる。
『解剖』という単語にひどく反応してしまう私も…。
2日に一度、能力活性剤を飲まなければならないらしく、私は渋々と研究室に足を運ぶ。
放送でガッツリとNo.56というのが呼ばれていたし。
実莉と一緒に会話をしながら廊下を歩いていると、少し先に音子ちゃんがいた。
「音子ちゃーん!」
実莉の声に気がついた音子ちゃんが私達を振り向くと、柔らかく微笑んで手を振ってくれた。
「やっほ~真莉ちゃんと実莉ちゃん。二人も能力活性剤を飲みに行くの?」
「そうだよ!あれ、那奈ちゃんは?一緒じゃないの?」
「那奈は今日、別の用事があるんだって。昨日のうちに能力活性剤は飲んだらしいから、私だけだよ」
「そっかぁ~、那奈ちゃん忙しそうだね」
「そうかな?那奈はいつものんびりしてるけどね。あ、良ければ一緒に行かない?那奈がいなくて寂しかったから」
「「もちろん!!」」
スタスタと音子ちゃんに歩み寄っていると、奥にある研究室から、福井くんが出てきたのが見えた。
声をかけようと思った。
そばに行って、久しぶりって声をかけようと思った。
だけど、福井くんが私へと向けた視線が……私の足を止めた。
睨み付けているような、軽蔑しているような目だったから。
「…っ」
「真莉ちゃん?どうしたの?」
「ううん…なんでもない。早く行こう…」
その視線から逃げるように、私はふらふらと研究室の扉を開ける。
その後、能力活性剤を飲み…個人の部屋に戻った。
ベッドの上に座り、枕を抱き締めて…んーっと顔を押し付ける。
福井くん…、怖かったな。
あんな視線向けられたの、初めて。
ていうか…福井くんと私はそんなに関わっているわけじゃないんだけどね。
私は友達だと思っていたから…ちょっと傷ついた。
ぷにっ。
「まぁーりちゃん!そんな顔しない!!」
枕の下から手を突っ込まれ、両頬を実莉に伸ばされる。
「い、いひゃいよ…みり…」
「……なにかあったの?さっきから様子が変だよっ」
「なんでもないってば。でも、心配してくれてありがと」
「うーん、そっかぁ…。でも、なにかあったらちゃんと言ってね?心配するからね!」
「あはは…ごめんごめん。わかったよ。」
『午後10時、就寝時間をお知らせします。個人の部屋に戻っていない人は、早めに戻りましょう。繰り返します。午後10時、就寝時間を__』
「あれ、もうそんな時間かぁ…。確かに眠くなってきたかも……」
実莉がふわぁとあくびをして、掛け布団をかけた。
「電気消すよ。おやすみ、実莉」
「おやすみ~、真莉ちゃん」
カチッと音を立てて電気を消すと、私もベッドに横になった。
明日、誰も解剖されないといいな……。
私は目を閉じると、すぐに眠りに入った。