四つ子の計画書
「こっち捜せ!!必ずどこかにいるはずだ!」
「福井様が一般研究材料を庇っただと!?そんなわけがあるか!きっと利用されたんだ!」
「見つけ次第、一般研究材料のみを殺せ!」
大きな木箱の裏に隠れ、なぜか福井くんに目と耳を塞がれている状況。
なぜ、こんな状況に…?
ぱたぱたと手を仰がせて、頭を横に振っていると視界が急に開けた。
同時に耳を塞がれていたのが解放され、福井くんを見ると、真剣な表情をしていた彼が向こうを見つめていた。
「…ここにいることもいつか発見される。真莉、今から言うことをよく聞いて。」
福井くんの視線が私に向けられ、かなり近い距離なので少し緊張する。
「う、うん。わかった」
「僕があの研究員に話して誤魔化すから、真莉は個人の部屋に行って、妹さんと話をするんだ」
「実莉と……?」
私が聞くと、福井くんは頷いた。
「研究員はかなりの人数でいる。君が移動している最中に見つかって、連れていかれる可能性も高い。
そうならないように、人気の少ない場所まで移動しよう。
それと、妹さんと話が済んだらしばらくは個人の部屋に留まっておくんだよ」
「え…どうして?」
「君が今まで通り行動していたら、研究員のひとりやふたりは必ず目をつける。あっという間に解剖させられるさ。
そうならないためにも、部屋に留まっておくのが一番良いんだよ。
ここの決まりで、研究員や施設の者は、双子の個人部屋に足を踏み入れることは禁止されている」
この施設に、そんな決まりがあったなんて……。
まったく知らなかった。
あ、でも確かに……今まで研究員の人や施設の人が個人の部屋に入ってきたことはなかったかも。
ガタンッ
「…っごめんなさい」
「大丈夫。気づかれる前に早く行こう」
思わず音を立ててしまったが、福井くんが私の手を引いて、小走りで他の場所へと移動し始めた。
「多分、勘づかれたな」
「え…?」
さっきいた木箱の方を振り向くと、さっきまでいなかった研究員の人が木箱を壊して、裏側や中を探していた。
タッタッと靴の音を立て、廊下を走る。
福井くんも、ここにいるってことは双子なんだよね……。
もしかして…、あのガラスの向こう側にある重そうなドアに書いてあった『由紀』って子が…?
さっきの食堂付近まで来ると、福井くんはドアの隙間から中を見た。
……あれ?
福井くんの目って青色だったかな…?
初めて福井くんと会った時は青がかった瞳だったけど…、さっき見つめられた時は違った。
「食堂に入って、裏側の廊下を通るんだ。そこに非常口の扉があるから、そこを使って個人部屋のところまで行きな」
福井くんが繋いでいた手を離すと、食堂の扉を開けて私の背中を押した。
「また、会えるといいね」
福井くんがそう呟いた言葉は、確かに私の耳に届いた。
だけど、振り返った時には…既に福井くんの姿はなかった。