四つ子の計画書
隠された真実と愛
廊下を無我夢中で走り、自分の個人部屋へと向かう。
実莉と話すのは、少しだけ気まずいかもしれない。
それに、音子ちゃんは私を怖いと言って意識が朦朧としていたし…。
ぴたっと止まりそうになった足を、無理やりに動かした。
だめよ私。
それに、私の何が怖かったのかがわからないし…。
どうして私が研究員に狙われていたのかすらよくわかっていない。
きっと、お父さんのことを思い出している最中になにかあったんだ。
それしかない気がする。
ガラッ
「あっ!……真莉ちゃああああんんっ」
「ぐはっ!!!」
ドスっという鈍い音がして、私は床に転がった。
個人部屋に入った途端、ベッドの上で何かを見ていた実莉が勢い良く飛んできた。
まるで鳥のようだ。
って…、そんなこと言えるような状況じゃないんだけどね。
実莉からのタックルで腹部を強く打ち、胃からダメな物が出てきそうなのを堪える。
「真莉ちゃん!!えっ、生きてる!?幽霊……っ、あ!触れる!生きてる!!うあああん」
ぺたぺたと私の腕に触れた後、安心したような表情に変わった。
「真莉ちゃん!大丈夫だったの!?ふ、福井さんは…?」
「み、実莉…落ち着いて。ちゃんと話すからっ」
「うん!」
その後、実莉に全てを話した。
福井くんが言っていた、ここの決まりのことやしばらくは個人部屋に留まっておかなければならないこと。
実莉は真剣な表情で聞いてくれていた。
「うーん、そっかぁ。……よしっ!真莉ちゃんは私が守るよ!毎日食堂からご飯持ってきてあげるからね!あ、シャワールームの着替えも持ってこなくちゃ……」
「そ、そこまでしなくてもいいよ?人がほとんどいなくなったら、私が自分で取りにいくし……」
「だーめ!私が許しません!
福井さんは、真莉ちゃんのことを思って言ってくれたんだよ。それを無にしたらいけない」
「でも……さすがにそこまでさせるわけにはいかないよ」
「真莉ちゃん、申し訳ない気持ちより……感謝の気持ちを思ってくれたら、すっごく嬉しいんだよ?」
にこっと笑う実莉を見て、頷いた。
音子ちゃんにも、言われた気がする。
『ううん!そこはね、心配させてごめんねじゃなくて…心配してくれてありがとう!の方が、こっちもいい気持ちになるんだよ?』
謝られるより、お礼を言われた方が断然良い。
私も簡単に理解できることだった。
「実莉、お願いしていいかな?あと…ひとつ聞きたいことがあるの。また明日、この部屋で話そう」
「もちろん!まだ就寝時間まで余裕があるけど、真莉ちゃんきっと疲れたでしょ?先に寝よっか」
「うんっ。……実莉、ありがとう」
「えへへ、どういたしまして!」
実莉と私がそれぞれベッドに入ると、電気を消して眠りについた。
解剖の対象はなんなのか、わからないし知りたくもない。
だけど、きっと何かしらの理由がある。
私の身に起きた出来事を知り、それがどうやって研究員の心に触れたのかが知りたい。
目を閉じると、疲れと共に睡魔が襲ってきた。
ひどく疲れていた私は、すぐに眠りに入ることが出来たのだった。