四つ子の計画書
それから約3ヶ月が経ち、研究施設は大変なことになっていた。
解剖された双子の人数が異常なほどに多くなっていたのだ。
ひとりやふたりの解剖が済めば、ある程度の研究結果は出るはず。
だけど、それでも解剖研究が止まらないのは……きっと私のせい。
あの時、研究員が私を食堂から連れていけば解剖される双子も少なかったはず。
私は息をするのも辛くなり、1日中ベッドの中で寝ている時もあった。
実莉は変わらず私に笑顔を向け、毎日欠かさず食堂からお盆に乗せたご飯を持ってきてくれる。
とても有り難いし、申し訳ない。
能力活性剤はご飯の中に混ぜられているため、わざわざ研究室に行かなくても良い。
行けば、間違いなく捕まるだろうし。
それと、ひとつわかったことがあった。
あの日、皆から見た食堂での私は……まるで『化け物』のようだったと。
最初は意味がわからなかったけど、次第に明らかになっていった。
私が考え事をしている最中、海斗くんが話を続けていたが、私の異変に気がついて口を閉じた。
私の目は青緑色に光り、髪の毛をなびかせて俯いていたらしい。
食堂に来ていた全員の人が声を揃えてそう言った。
私が我に返った途端、その異変はおさまったと。
その異変のせいで、私と研究員に狙われたんだと、実莉が教えてくれた。
音子ちゃんや皆と会わせる顔がなくて、1ヶ月ほど会わなかったが…ある日、海斗くんと彼方くんが個人部屋のドアをノックした。
『いくら能力値が高くても、真莉は俺らの仲間だ』
『気にしないでいいよ。僕達も真莉さんを守ってあげる』
二人がそう言ってくれて、とても心強かった。
そして……、私が気になっていること。
あれ以来、福井くんの姿を見かけていない。
本当にどこにもいなくて、朝早く起きて…あのガラスの向こう側を見ても、ノックしても福井くんはいなかった。
あの時、食堂で言っていた…『また、会えるといいね』という言葉は、本心だったのかな…?
もう会えないかもね、という意味でも捉えられる。
福井くんに会いたい。
会って、もう一度話がしたい。
「真莉ちゃん、お客さんだよー」
実莉の声がして、ベッドから降りる。
「…体調、優れない?『二人』には帰ってもらおうか…?」
「二人…?」
「うん。音子ちゃんと那奈ちゃんが話をしたいって」
しばらく会っていなかった二人。
久しぶりに話もしたいけど……、不安でもある。
だけど、ずっと悩んでいたら絶対に話をする機会を逃してしまう気がする。
「…私も、話がしたい」
「うん!わかった!二人とも、入ってきていいよー」