四つ子の計画書
「遥っ!!」
「遥さん!!」
そこで、遥さんが実莉を突き飛ばして銃弾の身代わりになったことを理解した。
遥さんはその場に倒れ、口から血を吐いた。
「遥さん…!なんで!!」
実莉が取り乱し、ワンピースのポケットに入れていた毛布を広げて、傷口を止血しようとする。
だけど、弱々しく遥さんはそれを掴んだ。
「だめ、だよ……汚れる…でしょ…?」
「汚れない…!!汚れないよ!! なんで!!私が撃たれれば良かったのに…!!」
毛布の裏側から溢れ出す血に、私は目を見開く。
なにやってるの私……。
早く……、遥さんの傷口を止血するの手伝わなきゃ。
なんで、足が動かないの?
助けて……。
誰か、私を……。
その時……、トンっ、と背中が押されて気がつくと遥さんのそばにいた。
後ろを振り返ろうとすると、目を塞がれる。
「お前……っ!?なぜ私を裏切った!!」
西山小波の怒ったような声が聞こえ、びくっと体が震える。
「やだなぁ、私は味方したつもりはないよ?だって、私は梨乃の味方だし!ね?小波ちゃーん!」
頭上から可愛い女の子の声が聞こえて、目を塞いでいるこの人の声だとわかった。
「…小波ちゃんもさ、裏切ったよね。人を誰も殺すなって命令したのに、それに従わずに撃っちゃったもんね」
「違う……撃ったのは私じゃない!!この長田真莉だ!!」
私……?
「嘘つきさんにはお仕置きが必要って、昔小波ちゃんから教わったのに……。教わった人にお仕置きする日がくるなんて!あぁ!夢みたいだよ!!」
カチャ…。
なにか聞き覚えのある音が聞こえて、嫌な予感が体を駆け巡る。
「今から小波ちゃんに、選択肢をあげまーす!
1、今ここで私に射殺される。
2、彼方くんに射殺される。
さあ、選んでちょーだい!」
理不尽にもほどがある。
どちらも、殺されるのには違いない。
生きるという選択肢はないのだ。
だけど、彼方くんに射殺されるってどういうこと…?
彼方くんは絶対にそんなことしない。
「あんた、ただじゃおかないわよ!実の母親にこんなことして…!」
「バーカ。ただじゃおかないのは小波ちゃんの方だよ。私はあんたを母親だなんて思ったことはないし。いい加減死んでくれない?」
「なんですって…!?許さない!!この施設全体を爆発させてやる!!」
その時、視界が開けて明るい光は瞳に入ってきた。
目を瞬きさせて、後ろを振り返るとおかっぱ頭の女の子が、西山小波に銃口を向けていた。
「そんなことどうでもいいよ。でも、私の大切な弟を死なせたら許さないから」
「ふはは!あんたもこれで終わりよ!ここで姉弟揃って死んでちょうだい!!」
「そこにいる皆、死にたくないなら奥の出入口まで走りな。大丈夫、時間は稼いであげるから」
おかっぱ頭の女の子がこちらを振り返り、微笑んでそう言った。
その女の子は、梨乃くんそっくりの笑顔だった。
爆発音が鳴り響き、私は音子ちゃんに手を引かれてその場から離れた。