四つ子の計画書
「可愛い!!これ欲しい!!」
一通り水族館の中を見終わると、お土産屋さんに行った。
イルカショーは、何かの原因で中止になっていた。
実莉はものすごく落ち込んでいたけど、お土産屋さんのイルカのぬいぐるみを見た途端に戻った。
「どれどれ……あー、ちょっと高いね。ぬいぐるみだから仕方ないよ」
「どうしても欲しい!!これ、私の誕生日プレゼントでいい!」
「本気で言ってるの?前に欲しいって言ってた本はどうするの?」
「もういらない!!これにする!!」
「はぁ~…わかったわかった。じゃあこれ買うね」
「やったぁ~」
ぬいぐるみを持ってレジに行くと、実莉もついてきた。
鞄から財布を取り出して、お金を出す。
「……っ…は、はい…お預かりします」
店員さんと目が合ったと思えば、顔を歪めてひどく悲しそうな表情をした。
「お、お釣りです…」
「…どうも」
私は、すぐに察した。
隣にいる実莉と私の顔が瓜二つなら、双子と考える。
あんなニュースが放送されたんだ、無理もない。
私はぬいぐるみが入った袋を受け取ると、実莉の手を引いてお土産屋さんを出た。
「真莉ちゃん、あの店員さん体調悪そうだったね…」
「うん……」
「でも、ぬいぐるみ買ってくれてありがとう!」
「どういたしまして」
袋を渡すと、実莉はにこにこと嬉しそうにそれを抱き締めた。
「家に帰ったら飾るの?」
「もちろん!あー、楽しみ」
すると、ポケットの中のスマホが震えた。
なんだろうと取り出してみると、電話がかかってきていた。
「はい、もしもし」
『真莉っ!!あんた無事!?』
スマホの向こうから聞こえる柚希の声。
焦っているような、怒っているような感じだった。
「どうしたの?私は無事だけど…」
『そう…良かった。ねぇ、今どこにいるの?』
「大きな水族館にいるよ。実莉と私の誕生日だから、お母さんが連れてきてくれたの」
『すぐにその水族館から出て!!』
「えっ……?どういうこと?」
意味がわからず、頭の上にはてなマークが浮かぶ。
またなにか変なニュースが放送されたのかな…。
水族館は人で溢れ返っているし、出入り口付近にも人がいるからたどり着くまでに少し時間がかかりそう。
「意味がわからないよ。一体どうしたの?」
『早く出なさい!!実莉も連れて私の家に来て!!』
「どうしたの?真莉ちゃん」
隣で私達の会話を聞いてた実莉が首をかしげた。
『今、速報ニュースが放送されてんの!!!』
「速報、ニュース…?」
『この世界に、特別感染ウイルスが放出されたって!』
その瞬間、周りの音が聞こえなくなって…柚希の言葉が脳内で繰り返し再生される。
『研究員はこの街にも双子を探し回ってるって!その水族館にいちゃ、すぐに捕まるわよ!!』
「あ…ああ………」
「真莉ちゃん…?」
ダメだ……。
私がちゃんとしなきゃ。
実莉を連れて柚希の家に行かなくちゃ。
実莉の手を引くと、私は出入り口に向かって走り出した。