幸せ
君が横で眠っていて
髪の毛から同じシャンプーの匂いに混じって君の香りがする
ただそれだけで
たったそれだけのことで
僕は涙をながしていた。
昨日観た映画のDVDが床に転がっていてどんな結末だったっけなんて考えていた。
そうだ、確かあの二人は結ばれなかったんだ。
それで君は泣いていたんだ。
でも僕は泣けなかった。
映画を観て素直に泣ける君が羨ましかった
そんな君が綺麗で羨ましくて妬んで苛立って色んな感情がぐちゃぐちゃになって気がついたらお互いの唇を合わせて泣く君の口を塞いでいた。
君は少し驚きでもすぐに僕の背中に手を回して受け入れてくれた。それがまた僕を苛つかせ、興奮させカラダが君をもっと欲しがった。
キスをしたまま君の服の中に手を忍ばしホックを外す。流れるように纏っていた布を脱がせると君も僕の布を剥いでいく。
僕の背中に回された手に力が入る。そんなことは気にも留めずただひたすらに君にキスをする。
口、頬、首、お腹、足、そして背中
君への苛立ちはいつの間にか愛おしさへと変わっていた。
離したくない
終わりたくない
そう心から思った。
僕らはそのまま深く、激しく抱き合った。
朝日がカーテンの隙間から入り込む。
ずっとあのままでいたかったと思っていたのにいまは君と朝ごはんを食べたいと思っている。
早く起きないかな。
君が起きたら近所のパン屋にクロワッサンとあんぱんを買いに行こう。
きっと君は眉をひそめて朝から甘いものなんてよく食べられるねなんて言うんだろうな。
それで家に帰ると君はコーヒーを淹れてくれる。
コーヒーの香りが部屋に漂よって僕ら二人は幸せになる。
僕はコーヒーを淹れる君の横顔が好きだ。
君の淹れてくれるコーヒーが好きだ。
朝日に照らされた髪の毛がキラキラと光っている。
僕は思わず君の髪に口付けをする。
それでも起きないから君の口にキスをした。
そっと優しく昨日とは全く違うキスをする。
キスと言えるのかも怪しいぐらい優しいキスを。
君はやっと目を覚ました。
キスで目を覚ますなんておとぎ話みたいだと思って僕は少し笑いそうになってしまった。
君はまだ目が覚めきってない様子でボーとしている。
僕がおはようと言うと少し時差があった後おはようと緩みきった笑顔で言う。
それが愛おしくてまたキスをした。
君は恥ずかしそうにでも嬉しそうに笑っていた。
あぁ幸せだとそう思ったんだ。