冷徹部長の溺愛の餌食になりました
翌日の夜。
いつもより少し早めに仕事を切り上げて、私たちの姿は駅からほど近いラグジュアリーホテルにあった。
大きなシャンデリアが輝くきらびやかなホールの中は、集まった社員から社長までの会社関係者でにぎわっている。
横長のテーブルにはビュッフェ形式で沢山の料理が並び、皆食事や歓談を楽しんでいる。
その中で、私はシャンパンの入ったグラスを片手にホールの端にひとり立っていた。
来てみたはいいけれど、やはり気持ちが乗らなくて、誰と会話をするでもなくこうしてひとり過ごしている。
「いやー、久我!この前のイベント素晴らしかったよ!」
その名前につい条件反射で目を向ける。
見た先では、久我さんはホールの真ん中で他部署の上司や女性社員に囲まれていた。
「いえ、自分ひとりの成果ではありませんので。チームメンバーのおかげです」
「謙遜しないの。清人が一番頑張ってたじゃない」
さっぱりとした口調で言う久我さんの隣では、小宮山さんがシャンパン片手に笑う。
聞けば先日の七夕でのプロジェクトが大成功に終わり、社内外の評価もとてもよかったのだそう。
取引先からは早速、同じチームで依頼したいと話がきているらしい。さすが、久我さんと小宮山さんのチームだけある。
あぁして並んで立つ姿も、やっぱりよく似合っている。
そんなことを思いながら、胸にまたチクリと刺さる痛みを流そうとグラスの中身をひと口飲む。
すると、横に立つ女子たちからひそひそと声が聞こえた。