冷徹部長の溺愛の餌食になりました



「見て見て、久我さんたちまた囲まれてる」

「あのふたり仕事でもいいコンビだけど、見た目も本当お似合いだよね」



彼女たちも私と同じところを見ているのだろう。先ほど私が思ったことと同じことを口にする。



「仲良いし付き合ってるって噂だよね」

「うん。まぁ、そうじゃなきゃお互い下の名前で呼んだりしないでしょ」



……そう、だよね。

小宮山さんはともかく、久我さんまで彼女を名前で呼んでいる仲だ。それだけで、ふたりの関係が特別なことはすぐわかる。



『……りさ……』



小宮山さんの名前を呼ぶ、あの日の彼の熱いまなざしを思い出すとまた胸が苦しくなった。



……今は、噂話ひとつすら聞きたくない。

私は空になったグラスをウェイターに返し、逃げるようにホールを出る。

そして通路からつながった先にある屋外プールへと出た。



小さめの貸切用プールらしい、そこは誰もおらず青い照明がまるで海の中にいる錯覚を覚えるほど幻想的に照らしていた。

ビルとビルの間から、東京タワーの輝きが見える。それを見つめていると、夏の夜の風がふわりと頬を撫でた。



涼しい。冷房がよく効いたホールとは違う、優しい風に安心する。


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