冷徹部長の溺愛の餌食になりました
今だに信じられないし、夢心地だ。
だってまさか、『付き合うか』なんて言ってくれるとは思わなかった。
まぁ、あれから私たちは普通に仕事に戻って、それぞれ帰って、土日もなんのアクションもなく月曜日を迎えてしまったけれど。
付き合った途端重いとか思われたくなくて、電話はおろかメッセージすら送れなかったんだよね……。
でも正直、久我さんのことを騙しているようで罪悪感もある。
久我さんからすれば、好きな人がいるのに責任感で私と付き合うことになっただけだろうし、きっと不本意だろう。
本当のことを久我さんにきちんと伝えるべきだと思う。
そうすれば、『そういうことなら』と彼も責任感を感じることなく、私との行為をなかったことにできるだろう。
けど……千載一遇のこのチャンスを逃すこともしたくない。
土日の間も何度も、罪悪感と嬉しさを天秤にかけた。
けれどやはり最後には、付き合えたという事実が嬉しいほうに気持ちが傾いてしまう。
そんなことを考えていると、薄い箱を持った先輩女性社員がこちらへ近づいてきた。
「霧崎さん、お土産買ってきたから食べて」
「ありがとうございます。いただきます」
差し出された箱の中に並ぶ、個装されたお菓子をひとつ手に取ると、パッケージには温泉まんじゅうの文字が書かれている。