冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「久我さん、企画書確認お願いします!」
大きな声を発しながら資料を差し出す。
その先にいるのは、デスクでパソコンを操作していた彼……久我さんだ。
黒い髪を軽く上げ、シワひとつないグレーのスーツをきっちりと着た彼。
なにも言わずそれを受け取ると、愛想なく資料に目を通した。
どんなに自信のある資料でも、こうして確認される時はいつもドキドキしてしまう。
緊張でそわそわとしながら、整理整頓されたデスクを見てその反応を待った。
すると久我さんは資料を読み終え、こちらに突き返す。
「やり直し」
「え!?なんでですか!」
「数字の見通しが甘い。マーケティングを細かくしてより具体的な数字が出ないと取引先も納得しないだろ。勢いだけでどうにかしようとするな。あと誤字脱字が多くて読みづらい」
淡々と告げられるダメ出しがグサグサと刺さり、先ほど上昇していた気分を一気に冷静なものにさせる。
く、悔しい……けど、確かにちょっと情報不足は否めないかも。
はっきりと言われることで納得してしまい、さらに返された企画書を改めて見ると、彼の言う通り誤字脱字も要所要所に目についてぐうの音も出ない。
けど、上司ならもっと優しい言いかたをしてくれてもいいと思う。