冷徹部長の溺愛の餌食になりました
◇ずっと このまま
入社してすぐ配属された、第一営業企画部。
ここで出会った彼の第一印象は、“愛想のない人”だった。
『久我だ。よろしく』
よろしく、と言うわりにはにこりともしない。
けれど、心を見透かされてしまいほうな真っ直ぐな瞳が印象的だった。
入ってから半年は毎日叱られてばかりで、正直久我さんが苦手だった。
細かいところまでいちいち注意するし、少しできたくらいじゃ褒めてくれない。冗談も言わないし、と好きになれる要素がなかった。
けれど、入社から一年ほどが経ったある時。私は取引先とトラブルになってしまったことがあった。
取引先の担当者である男性社員は、新人の私にきつくあたるタイプの人だった。
企画を何度出してもケチをつけられ再提出させられ、電話をしてきては『企画のクオリティが低い』、『これだから若い女は使えない』、『この仕事に向いてないんじゃないか』と繰り返し言われた。
自分の仕事が至らないから、もっと頑張れば認められるかもしれない。
そう思うと誰にも相談できなくて日に日に心身ともにまいっていった。
そんな私の異変に一番に気が付いてくれたのが、久我さんだった。
『霧崎。お前、なにかあったか?』
残業中、ふたりきりのオフィスで久我さんにたずねられ、私は一度は『なにもないです』と笑ってごまかした。
久我さんのことだ、きっと知ったら怒るだろう。呆れて、今後仕事を任せてもらえなくなってしまうかもしれない。
そんな不安ばかりが押し寄せて、本当のことなど言えなかった。
けれど、久我さんはそんな私をじっと見つめて目をそらすことはなかった。