冷徹部長の溺愛の餌食になりました
その日をきっかけに、私の中での久我さんの印象が少し変わった。
よく見てみると、彼は見ていないフリをしながらもみんなのことをよく見ていることに気づいた。
その人の仕事ぶりやコンディションもよく見ているし、気になる人にはそれとなく声をかけている。
仕事中の厳しさゆえに周りの人から壁を作られがちだけど、普通に接すれば普通に応えてくれる。
勇気を出してちょっと強気に絡んでみても、意外と優しかった。
そうやって、ひとつひとつ彼のことを知るうちに、もっと近づきたいとかもっと知りたいとか思うようになった。
そして好きだと気づいたときには、心の中は彼でいっぱいになっていた。
彼の好きなもの、嫌いなもの、いろんなことをもっと知りたい。
そんな思いから毎日のように久我さんを見ていて、だからこそすぐに気づいた。
彼の目が向く先には、いつも小宮山さんがいること。
優しく見つめるその目に、好きなのかな、という疑問が、好きなんだろうなと確証に変わった。
それでも想うのをやめられなかったのは、もう後戻りできないくらい胸を彼が占めていたから。
寝ても覚めても、いつでも久我さんのことばかり考えてしまっていたから。