冷徹部長の溺愛の餌食になりました



「忙しそうだよな、久我さん」



すると、隣に立っていた馳くんからいきなり久我さんの話題を振られてドキリとした。

久我さんのことを考えていたのがバレたのか、と一瞬ヒヤリとするけれど、私の視線の先を追いかけただけらしい。



久我さんのほうを見ながら言う馳くんに、私も頷いて答えた。



「確か久我さん、大きいプロジェクトのメンバーに選ばれたんだっけ」

「そうそう。時間もないし、有名ブランドの企画で絶対ミスできないから選ばれた人たちみんなピリピリしてるよ」



そう、久我さんは来月銀座で行われる、大手ジュエリーブランドの大きなイベントのプロジェクトメンバーに選ばれている。

その準備に追われて今が一番忙しい時期らしく、さらに普段の仕事もあり、その中で部下のことも見つつ……と彼は最近朝から晩まで働き詰めだ。



馳さんとチラッと見ると、パソコンを見る彼の目元にはうっすらクマができており疲れが見える。

やっぱり疲れてるんだろうなぁ。そうだ、息抜きにコーヒー淹れてあげよう。



そう思い私は給湯室へ行き、濃いめのコーヒーを一杯注ぐと、それを手に彼のデスクへ向かった。



「久我さん、お疲れさまです。コーヒーどうぞ」



声をかけながらデスクにカップを置くと、久我さんはこちらへ視線を向けて小さく頷く。



「悪いな」

「どういたしまして。お忙しそうですね、なにか手伝えることありますか?」

「いい。人のことより自分のこと考えて精度の良い企画あげろ」



気遣って言うものの、バッサリと断られてしまう。


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