冷徹部長の溺愛の餌食になりました
確かに……自分の仕事で手いっぱいの私が言うなというのはわかるけど。
でもめげない!久我さんの役に立ってみせる!
「そんなこと言わずに頼ってください!肩揉みましょうか?それともなにか音楽でもかけましょうか?」
「そうだな、じゃあ今すぐデスクに戻って仕事してくれ」
久我さんはそうピシャリと言うと、ふたたび視線をパソコンに戻し仕事を再開させた。
手厳しい……。
言われた通り仕事をしよう、と肩を落としてデスクに戻ると、一部始終を見ていた馳くんがけらけらと笑った。
「久我さんにあしらわれてやんの」
おかしそうに言う彼に、私はふて腐れるように頬を膨らませる。
「やっぱり男の人って、弱いところは見せたくないものなのかな……」
「まぁそうだな。でも久我さんは特にそういう感じあるよなぁ。普段誰かに頼ったりとか絶対しないし、疲れたとか言わないし」
確かに。久我さんは疲れていても『疲れた』なんて言わないだろう。
弱音ひとつも吐かないところが彼らしいけど、一応恋人なんだし私には少しくらい見せてくれてもいいと思う。
いや、私が頼りないからなのかもしれないけどさ。
しっかりしていて頼り甲斐がある人……小宮山さんになら、弱さも見せられるのかな。
そう思うとまた、胸が小さく痛んだ。
私が小さく拳を握ったことに気付くことなく、馳くんは久我さんを見たまま言う。