冷徹部長の溺愛の餌食になりました
そして、迎えた昼休み。
時計の針が12時過ぎを指した頃、私はランチトートを手に久我さんのデスクに一直線に向かう。
「久我さん、今時間ありますか!?」
「なんだ、仕事の話なら聞くけど」
「はい!すごく大切な案件なんです!」
私はそう強く言い切ると、彼の腕を引っ張り、半ば強引に近くの応接室へ連れて行く。
そして部屋のドアをバタンと閉じると、久我さんへお弁当箱が入ったバッグを差し出した。
「これお弁当です、食べてください!」
目の前に突き出されたそれを見て、久我さんは驚いた顔をした。けれどすぐに呆れたようにため息をつく。
「……これのどこが大切な案件なんだ?」
「言い得て妙です!」
「使い方間違ってるぞ」
忙しい彼に嘘をついて連れてきてしまった。けれど、ああでも言わなきゃ仕事を中断してまで時間を割いてくれないと思ったから。
「だって、私が久我さんに出来ることってないから……せめて栄養が取れるごはんを作るくらいならできるかなって」
彼を思う気持ちと、嘘をついてしまった申し訳なさ。ふたつの気持ちを抱きながら言う私に、久我さんは呆れた顔のまま少し考える。
「霧崎に気遣わせるほど俺の顔はひどいか?」
「はい!それはもうすごく!」
「……仕方ない、なら少し休むか」
折れたのか、困ったように小さく笑って彼は私からお弁当を受け取った。
わ、笑顔かわいい。
不意打ちの笑顔に胸をきゅんとさせながら、だらしなくにやけそうになる口角をきゅっと持ち上げる。