冷徹部長の溺愛の餌食になりました



「じゃあ私はこれで!ゆっくり食べてくださいね」



本当は一緒にごはん食べたいけど、疲れてるだろうしひとりでゆっくりできたほうが嬉しいよね。

そう思い足早にその場を去ろうとした。

そんな私に、久我さんは椅子に腰掛けながら「霧崎」と呼び止める。



「お前も飯まだだろ。弁当、持ってこい」



言いながら、彼はポンポンと自分の隣の椅子を軽く叩いた。



持ってこい、って……つまり、一緒に食べようということ?

ひとりでゆっくりできたほうが、と思っていたはずなのに。彼のその言葉が嬉しくて、頷かずにはいられない。



「は、はい!」



ふたつ返事で答えると、駆け足でオフィスに戻り自分の分のお弁当箱を手にし、再び応接室へ駆け戻る。

まるで犬のようだ、なんて自分で思いながら久我さんの隣に腰掛けると、ふたり同じタイミングでお弁当箱を開けた。



彼の分の黒いお弁当箱と、自分の分の赤いお弁当箱。

その蓋の中には、だし巻き玉子やミニハンバーグ、ほうれんそうの和え物など彩りのいいおかずが詰め込んである。ごはんも、ハムや枝豆と和えたものにしてみた。



久我さんの好みがわからないから、無難なものばかりになってしまった。

けれどなるべく脂っこすぎず、バランスのいいおかずを中心にしたつもりだ。



料理は結構好きだから自信がないわけではない。けど、どんな反応が返ってくるかがわからずドキドキしながらその様子を伺う。


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