冷徹部長の溺愛の餌食になりました



「どうですか?」



ごはんをひと口食べた久我さんにたずねると、彼はもぐもぐと口を動かしながら頷いた。



「美味い。意外と料理できるんだな」

「ギャップ萌えってやつです!」

「自分で言うのか」



そう言いながらおかしそうに笑う。これまであまり見たことのないその表情に、心がくすぐられた。

久我さんは箸を進めると、あっという間にお弁当を完食した。



「ごちそうさま。あー、久しぶりにちゃんとした飯食った気がする」

「いつもなに食べてるんですか?」

「カップ麺かコンビニ弁当。もしくはコーヒー」



やっぱり……。予想どおりの食生活だ。

お節介かもしれなかったけど、でもお弁当を作ってきて正解だったかもしれない。



そんなことを考えながら、私もお弁当を食べ終え、からになったお弁当箱をトートバッグにしまう。

すると、少しして不意に久我さんが私の肩にもたれるように頭を乗せた。



えっ……久我さん!?

驚き隣の彼を見ると、伏せられたまつげとともに「すぅ」と小さな寝息が聞こえてきた。



ね、寝てる……?

お腹いっぱいになったら眠くなっちゃったのかな。かわいい、子供みたい。



あぁ、寝顔見たいけど角度的に見えない。でもこのまま寄りかかったままでいてほしい!

心の中で葛藤しながらも、結局私はそのまま、久我さんの寝息に耳をすませる。

やっぱり、疲れてるんだろうな。早くプロジェクトが落ち着きますように。



「……でも疲れた時くらい、もっと甘えてくださいね」



肩に彼の重みを感じながら、ぼそ、と呟いたひとり言は、ふたりきりの室内に溶けて消えた。




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