冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「……正論でももっと優しく言ってくれてもいいじゃないですか。だから『魔王久我』なんて言われるんですよ」
胸に浮かんだ不満をそのまま小声で漏らす私に、再びパソコンへ目をむけようとした彼はピクッと動きを止める。
そして席から立ち上がると、伸ばした右手の親指と人差し指で私の顔を挟んだ。
「おい、聞こえてるんだよ。生意気を言うのはこの口か?」
「いたいいたい、いたいです!セクハラー!」
容赦なくブサイクな顔にさせる彼に、私は半泣きで声をあげながらその手から離れる。
「そんな態度だから、何年も彼女できないんですよ!顔はいいのにもったいない!」
「余計なお世話だ。それに俺は恋人ができないんじゃなくて作らないんだ!そもそも入社から一度も浮いた話のないお前には言われたくない」
「私は今は仕事で手いっぱいなんですぅー!」
ああ言えばこう言う、かわいくない部下だと自分でも思う。
そんな私に久我さんは、鋭い目つきをした顔をピクピクとヒクつかせる。
「とにかく、もっと丁寧に練らない限りその企画書は却下だ」
そしてそうはっきりと告げたところで、ちょうど他部署の社員に呼ばれ、久我さんは部屋を出て行く。
彼が去りドアが閉まった途端、その場にいたみんなは一気におかしそうに笑った。