冷徹部長の溺愛の餌食になりました



それから10分ほど走っただろうか。六本木の街の中で停められたタクシーから降りると、目の前には大きな建物がそびえる。



それはホテルやテレビ局、映画館などで構成された有名な複合商業施設だ。

会社からそんなに離れていないにもかかわらず普段あまり来ることのないそのビルを、首が痛くなるほど見上げた。



「ここ……」

「こっちだ」



久我さんは自然に私の手を取ると、建物の中へ入って行く。

エスカレーターで上に向かい、人が行き交う中、いくつもある建物の入り口のひとつを迷うことなく抜けた。



そして何人かとエレベーターに乗りボタンを押すと、最上階を目指した。

ポン、と鳴った音とともに扉が開く。

ふたり手をつないだまま降りると、そこには『展望台』の文字が見えた。



「展望台、ですか?」

「あぁ」



久我さんは、事前に手配してくれていたらしいチケットを受付に手渡しながら頷く。



こういう用意のいいところ、久我さんらしいなぁ。

ここに連れて来ようとか、そういうことを考えて用意してくれていたんだろうか。

そう思うとそれだけで、嬉しくて胸がいっぱいになる。



受付を終え、展望台のドアをくぐる。

するとそこには正面一面に大きなガラスが張られており、きらびやかな東京の夜景が広がっていた。



様々な背の高さのビルや、車が走る道路から、東京タワーやスカイツリー、お台場などの有名スポットまでが見渡せる。

圧巻の景色に、ガラスに張り付くように見ながら思わず「わぁ」と声が漏れた。


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