冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「……久我さんだから、です」
「え?」
「久我さんのことが好きだから、些細なことがはしゃぐほど嬉しかったり、甘えてほしいとか助けになりたいとか思うんです。久我さんに認めてほしくて、仕事もいっそう頑張れるんです」
久我さんのことが好き。
だから、彼の言葉や仕草ひとつで幸せにもなるし悲しくもなる。
甘えてほしいとか、支えたいとか、笑ってほしいとか。勝手な願いを押し付けてしまう。
「欲張りだってわかってるけど、全部、私のための願いでしかないんです」
だけどそれをあなたが笑って許してくれる。
それがとても嬉しくて、笑みがこらえきれず、えへへと笑った。
そんな私に久我さんは少しあっけにとられた顔を見せた。かと思えば不意に近づいて、私の頭をそっと抱き寄せる。
「……恥ずかしいやつ」
ぼそっと彼が呟いた。
耳のそばで響く落ち着いた低い声。けれどそれとは裏腹に、頬をあてた胸からはドクン、ドクンと鼓動が聞こえた。
私だって、気持ちを言葉にするのは恥ずかしい。
だけど、久我さんに知っていてほしいから。
あなたのことがこんなに好きで、好きで、たまらないこと。
いっそう気持ちを伝えるように、その背中に腕を回す。
人目も気にせず抱きしめるふたりの横では、ガラスの向こうに街の灯りがキラキラと輝いていた。