冷徹部長の溺愛の餌食になりました
今日の打ち合わせはベイドードリンクという飲料メーカー1件のみ。
営業担当の山内さんは24歳と私と同じ歳で、アイドルにいそうなイケメンだ。物腰も柔らかくて親切で、きっととてもモテると思う。
実際、彼がくると社内の女性たちもわっと色めき立つのを感じる。
まぁ、確かにかっこいいけど、私にとっての一番はもちろん久我さん。
そう思うたびに、やっぱり私は久我さんが大好きなんだなぁと感じてしまう。
「では、こちらの内容を一度まとめてまた改めて送らせていただきますね」
「はい、よろしくお願いします」
打ち合わせを終え、手元の資料をまとめる私に、山内さんは茶色い髪の毛先を少し揺らして小さく頭を下げた。
目尻を下げた笑顔は、今日も穏やかで優しげだ。
席を立ち、応接室から人が行き交う廊下に出たところで、山内さんはなにか言いたげに私を見る。
「あの、霧崎さん」
「はい?」
「えっと、あの、その……あの」
うまく言葉が出てこない、といった様子で口ごもる。
そんな山内さんに、どうしたんだろう、とその言葉の続きを待つと、彼は自分の鞄を持つ手に力を込めながら顔を赤くさせ大きく息を吸い込んだ。
「よかったら連絡先を教えていただけませんか!?」
「へ?」
「霧崎さんのことをもっとよく知りたくて……だから、つまり、僕霧崎さんのことが好きなんです!」
それは、予想もしなかった意外すぎるひと言。
私のことが好き?山内さんが??
驚き唖然とする私を、横を通り過ぎていく社員たちも驚いた顔で見ていく。