冷徹部長の溺愛の餌食になりました
耳まで赤くした山内さんは、きっとからかっているとかそういうわけではないのだと思う。
真剣な気持ちを向けてくれているのだろう。
けれど……その姿に、驚き以外の感情がひとつも湧かないのが率直な答えだ。
「す、すみません……あの、私お付き合いしてる人がいるので」
形だけとはいえ久我さんとは付き合ってるわけだし、嘘はついていないよね。
申し訳ない気持ちを抱えながらも私が伝えた返事に、山内さんは「そうですか……」と激しく落ち込み、肩を落とし帰っていった。
あぁ、仕事相手なのに大丈夫だったかな。
でも変にはぐらかして期待させるのも悪いし、私の答えは間違っていなかったはず。と思いたい。
それにしてもあんなイケメンが私を……なにがあるかわからないものだなぁ。
そんなことを思いながら、次の仕事にとりかかろうとオフィスに戻る。
「戻りまし、たー……」
いつものようにガチャリとドアを開けた瞬間、馳くんを始め室内の人々の視線が一斉にこちらへ向けられた。
突然のその視線に思わず「わっ」と声が出る。
「あかね、聞いたぞ!あのベイドードリンクのイケメンに告白されたんだって!?」
「えぇ!?」
早くも話が回ってる!?
話の早さに驚く私に、みんなはこちらに詰め寄る。