冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「今応接室のところで聞いたって、隣の部署の子が言ってたよ!」
「すごいじゃん霧崎さん!もちろんOKしたよね!?」
「えっ、いや、その……」
どうやら先ほどの話を聞いていた人たちから、凄まじい速さで話が回ったようだ。
あぁ、予期せぬ事態に……!こんなに一気に話が広まるなんて、さすが山内さんだ。
はっ、ということは久我さんの耳にも話が届いてる?
久我さんのデスクがある方をちらっと見る。
彼は聞いているのかいないのか、特になんの興味も示さず書類に目を通し、こちらを見ることなく部屋を出て行く。
まずい、このままじゃ変に誤解されちゃう!
せめて告白を断ったってことくらいはきちんと伝えなくちゃ。
詳しく話を聞きたがる皆もそっちのけで、慌てて久我さんを追いかけた。
「久我さん!」
ひと気のない、廊下端の階段まで行ったところで、私は彼のスーツの裾を引っ張った。
久我さんはそれに足を止め、こちらを振り向く。
「なんだ?仕事の話なら聞くけど」
「違うんです、誤解なんです!いや、告白のことは誤解ではないんですけど……でも!」
とりあえず弁解を、という気持ちばかりが先走り主語もまともに出てこない。
そんな必死な私に対して、彼は冷めた瞳を向けた。
「別に、お前が告白されようがどうでもいい」
久我さんが言った『どうでもいい』が、グサッと胸に刺さる。