冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「相変わらずだな。あの久我さんにあんな風に言えるの、あかねくらいだよ」
中でも、私の向かいのデスクに座る同期の馳くんが言うと、周りのみんなも同意するように頷く。
「だって、正論にしてもあんな怖い顔で言わなくてもいいじゃない。部下のやる気を育てるのも上司の役目なのに!」
「いや、久我さんの顔が怖いなんてみんな思ってるけどさ。思っても言えないだろ。さすが『勇者霧崎』と呼ばれるだけある」
面白がるように『勇者』の呼び名を口にする馳くんに、素直に褒められているわけではないと察して私は頬を膨らませた。
私の上司である久我清人という彼は、フロア内だけにとどまらず社内で一番名の知られた人だ。
その理由は、一番は第一から第三まである営業企画部の中でもダントツの営業成績を誇っていること。
彼の企画力と、それに惚れ込んだ取引先からの支持もあり、他部署は40代以上の人がほとんどの中、31歳という若さで第一営業企画部の部長を務めている。異例の出世だそうだ。
それに加えて切れ長の涼しげな目と高い鼻、薄い唇という、薄めに整った顔。
色の白い肌に黒い髪が映え、クールで知的といった印象を受ける。
さらには細身のスーツがよく似合う180センチ近い高身長と、独身かつ彼女なしという噂から女性人気がとても高い。
確かに、黙っていればかっこいい人だと思う。