冷徹部長の溺愛の餌食になりました
その日私は、落ち込む気持ちを紛らわすため夜までひたすら仕事にとりかかった。
告白されたという事実にもう少し浮かれてもいいはずなのに。
久我さんの突き放すような冷たい瞳と低い声だけが胸に残って、苦しい。
けどあんな風に喧嘩してしまって、明日以降どんな顔して久我さんと会おう。
いや、久我さんは明日もいつも通りの顔なんだろうな。
彼からすれば喧嘩にすらなっていない。私がひとりで騒いでいるだけ。
そう思うと余計、虚しさが心を覆った。
その翌朝のことだった。
自宅のベッドの上で起き上がることができず横になったまま、ピピピ、という音に体温計を脇から抜いて見ると、そこには『38.6』の文字が表示されていた。
まさかの熱が出た……。そういえば昨日からくしゃみが出ていたっけ。
風邪気味だったところに昨日の久我さんとのことも重なって余計悪化してしまったのだろう。
とりあえず、と会社に電話しちょうど出た馳くんに熱がある旨を伝えると、『伝えておくからゆっくり休め』と言ってくれた。
馳くん、同期だけどまるで先輩のように頼りになるなぁ。
それに久我さんが電話に出なくてよかった、と安堵して私はスマートフォンを枕元に置き布団をかぶる。
休みもらえたし、ご飯食べて薬飲んで寝てよう……。
でもご飯なにもなかったなぁ、薬も確かきれていた。だけど買いに行く元気はさすがにない。