冷徹部長の溺愛の餌食になりました



「とりあえず寝よう……」



今は熱のせいで体がだるい。おまけに頭も痛くなってきた。

そっと目を閉じると、重い体がベッドに沈むのを感じた。

肩で息を繰り返すうち、熱でふわふわとした意識は、すぐに深い眠りに落ちる。



その眠りの中で見た夢は、やっぱり久我さんの夢だった。

紺色のスーツに身を包み、いつもと変わらぬ厳しい表情の久我さんが立っている。

その隣に小宮山さんが現れた途端、彼の目はそっと優しく細められた。



その目で、こっちを見て。

彼女じゃなくて私を見て。



どんなに強く思っても、久我さんがこちらを見ることはない。叫ぼうとしても、どうしてか声が出ない。

ただ苦しくて、つらくて、俯き泣き出した私はこの恋を諦めたいと願った。

それなのに。



『霧崎?どうかしたのか』



顔を上げると、久我さんがそう言ってこちらを見ていた。

誰にでもかけるような言葉を口にしながら、先ほどのような優しい目はしていない。

だけどたったそれだけのことが嬉しくて、やっぱり好きだって思ってしまう。



彼を想うと苦しい。だけどそれ以上に、愛しい。



――ピンポン、と聞こえた音にふと目を覚ます。



「ん……」



うっすら目を開けると、カーテンの隙間から見える空はまだ明るい。


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