冷徹部長の溺愛の餌食になりました



今、何時……。

まだ熱が上がり切らず、じんわりと汗ばむ体をゆっくりと起こし枕元の時計を見ると、時刻は15時だ。



結構寝たなぁ。朝よりは気分が多少マシになった気がするけど、それでもやっぱりまだ全身は熱くだるい。

やっぱり観念して薬買いに行かなくちゃダメかな……。



そう思っていると、再びピンポン、と音がする。

はっ、そうだ。さっきもこの音で目が覚めたんだった。誰か来たのかな?

不思議に思いながらインターホンを確認する。



「はい、どちらさまですか……」

『俺。久我だ』

「って、え!?久我さん!?」



どうして久我さんが!?

まさか彼が来るとは思わず、熱が出ていることも忘れて玄関までバタバタと走る。



そして勢いよくドアを開けると、そこにはスーツ姿でスーパーの袋を手にした久我さんの姿があった。



「元気がいいな。本当に病人か?」

「なんで……久我さんが?」

「見舞い。熱出てるなら飯とか薬とか必要なものあるだろ」



そう言って彼が突き出したスーパーの袋には、レトルトのおかゆや風邪薬などが透けて見えた。

なんで、このタイミングでほしいものを持って訪ねてきてくれたりしちゃうんだろ。



「久我さん、かっこよすぎで……」



言いかけたところで、思い出したように熱が上がり足から力が抜けてしまう。

前のめりに倒れそうになる体を、久我さんは腕で抱きとめた。


< 62 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop