冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「っと、しっかりしろ」
「す、すみません……」
その腕に抱きとめられたことが嬉しい、けれど喜ぶ余裕すらもない。
そんな私の様子から、よほど調子が悪いと彼も察したのだろう。そのまま私の体を肩に担ぎ持ち上げた。
「ひゃっ、久我さん!?」
「勝手に上がるぞ」
も、持ち上げた!?
それにはさすがに動揺してしまうけれど、降りたり騒いだりする体力はなく大人しく彼に従う。
久我さんは靴を脱ぎスタスタと家の中を歩くと、一番奥の部屋に向かった。
こんな風に軽々と持ち上げてしまうなんて、やっぱり男の人なんだなぁ。
でも大丈夫かな。本当は重いとか思われてないかな。
あれ、久我さんを家にあげたはいいけど私キッチンとか散らかしたままじゃないよね?下着とかその辺に置いてあったりしないよね?
はっ、それ以前に私すっぴんだしパジャマだし髪もボサボサだし……恥ずかしい!
この状況に対する嬉しさと不安と恥ずかしさで、いっそう熱があがりそう。
頭の中であれこれと考える私の一方で、久我さんはいたって冷静に、少し広めの1Kの部屋に置かれたベッドに私をそっと下ろす。
「飯は食べたのか?」
「いえ、まだ」
「じゃあおかゆ買ってきて正解だったな。キッチン借りるぞ」
久我さんはそう言って、部屋を出てキッチンへと向かう。
そして少ししてから戻ってきた彼の手には、お皿に盛られたおかゆが持たれていた。