冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「ありがとうございます」
湯気の漂うそれを受け取り、早速ひと口食べる。
いたって普通のレトルトのおかゆだ。だけど、久我さんが私のためにわざわざ買ってきてくれたというだけで、とても美味しく感じられた。
「おいひいれふ……」
口の中をおかゆでいっぱいにしながら言う私を見て、彼は呆れたように笑う。
そしてスーパーの袋から、風邪薬やスポーツドリンク、さらには冷却シートを取り出しテーブルに並べた。
「そんなにいろいろ買ってきてくれたんですか?」
「なにが必要かわからなかったからな。連絡して聞こうにも、もし寝てるようだったら起こしても悪いと思って」
久我さん……。
彼のその優しさに、昨日の悲しさとか、そんなことは全て吹き飛んでしまった。
久我さんパワーで風邪も治ってしまいそうな気力が湧いてきて、あっという間にお皿を空にする。
すると久我さんは、冷却シートを一枚取り出し私のひたいに貼ってくれた。
ひんやりとした感触が気持ちよく表情を緩めていると、彼は冷却シートの上から私のひたいをピンッと小突く。
「いたっ」
「ったく、浮かれてるから熱なんて出すんだ。そんなに告白が嬉しかったか」
……せっかく昨日のことも忘れていい気分だったのに。
掘り返すように言う意地悪な彼に、私は口を尖らせて答える。
「違いますってば。私が浮かれるのは久我さんのことだけです!」
「へぇ。あの山内ってやつのほうが、俺より優しくて歳も近いと思うけど」
俺より……って。そんな、久我さんと比べようなんてないのに。
気持ちを伝えたくてその右手をそっと握ると、指先は冷たく、彼の体温の低さを感じた。