冷徹部長の溺愛の餌食になりました



「そんなの関係ないです。冷たい態度されても、歳が多少離れてても、私は久我さんだからいいんです」



確かに、山内さんは優しいから、久我さんみたいに厳しいことは言わないかもしれない。

年齢も近くて、話も盛り上がるのかもしれない。

私を選んでくれて、私だけの片思いだなんて苦しい気持ちにならないだろう。



だけど、それでも。この心が揺れるのは久我さんに対してだけ。

久我さんだから、触れたいって思うから。



「だから、私には久我さん以外見えません」



笑って言い切った私に、久我さんは頬をほんのり赤くして顔を背けると、こちらに背中を向けてしまう。



「……またそういう恥ずかしいことを言う」

「だって本当のことですもん」



照れ臭そうに呆れた顔。その表情も会社ではきっと見られないもの。そう思うと嬉しくなった。



「食事も済んだし、薬飲んで寝ておけ。俺は適当なところで帰るから」

「薬って苦いイメージがあってこの歳になっても苦手なんですよねぇ……ゼリーとかあれば飲めるんですけど」

「子供みたいなこと言うな」



親のような言い方で、風邪薬を二錠手に出すと、水を用意する。



「久我さんが口移しで飲ませてくれたら簡単に飲めちゃうのに」



そんな冗談を言って、彼から『バカなこと言ってるな』と叱られるのを予想した。

ところが、彼から返ってきた言葉はそれとは違うもの。



「言ったな?」

「え?」



言ったな、って、どういう意味……。

私がたずねるより早く、久我さんは薬を一錠と水を自分の口に含む。

そしてそのまま距離を近づけると、私の唇に唇を重ねた。


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