冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「山内さん。お疲れさまです」
どうしてここに、と思ったけれど、そういえばベイドードリンクはこの近くにオフィスがある。
通勤ラッシュのこの時間帯なら会っても不思議ではないのだ。
山内さんは頬を赤らめ、まだ少し緊張したように言う。
「この前は変なこと言ってすみませんでした!いきなりで驚かせちゃいましたよね」
「あ、いえそんな」
「僕も焦り過ぎちゃったなって思って。なので、今夜にでもまずは一緒にご飯でもいかがですか?」
へ?ごはん?
その誘いに、いやでもこの前お断りしたはずと思いながら再度同じことを口にする。
「あの、この前お伝えした通り私今お付き合いしてる人がいまして」
「はい、それでも諦められなくて……その彼氏より僕のほうがいい男だって証明してみせます!」
意外と熱心なタイプのようだ。けど……。
恐る恐る、隣の久我さんを横目で見ると、彼は無表情で山内さんを見つめている。
そうかと思えば一瞬でにこりと笑顔を作ってみせた。
「すみません、霧崎は今夜は他の取引先との会食がありますので」
一見笑顔で穏やかな言い方だ。けれどよく見ると、その目はまったく笑っていない。