冷徹部長の溺愛の餌食になりました
◇いつか どうか




今年はあまり雨が降らないまま、迎えた6月最後の金曜日。

梅雨の終わりのまだじめっとした空気を吹き飛ばすかのような朗報が私のもとに飛び込んできた。



「本当ですか!?ありがとうございます!」



オフィスで仕事用のスマートフォンを片手に、私は取引先相手に声を大きくする。

そして「はい、ではまた」と通話を終えると、嬉しさを噛み締めた。



やった……クライアントから褒められた!

それは私の担当クライアントからの電話で、先日駅前に掲示された広告が非常に評判がよかったとの内容だった。



沢山悩んで練り直して、と時間をかけた広告だっただけに嬉しさもひとしおだ。こうして成果につながると、やりがいを感じられる。



「誰か、経理部にこの書類持って行ってくれ」

「あっ、はーい!私行く!」



馳くんの頼みに自ら挙手して書類を受け取る。そしてスキップしそうなくらい浮かれながら、営業企画部の部屋を出た。



「ずいぶんとご機嫌だな」



廊下を少し歩いたところで、背後から声をかけられる。

振り向くと、そこには久我さんがいた。打ち合わせを終えたところらしく、その手にはバインダーや書類が抱えられている。


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