冷徹部長の溺愛の餌食になりました
待ち合わせ時刻までまだ10分以上ある。
気持ちが落ち着かなくて、早く家を出てしまった。
駅前に来てもやはりそわそわとしてしまい、改札外のデパートのショーケースに映った自分を見て前髪の分け目がとか、毛先のはね具合がとか微調整を繰り返している。
大丈夫かな、おかしくないかな。
今日のために買った服は、白いレースのカーディガンに、紺色の花柄ロングスカート。
髪はいつもよりきつめに巻いたのをゆるく束ねて、靴は動きやすいようにフラットなパンプス。
年上である久我さんと並んだ時に子供っぽいと思われないよう、ちょっと落ち着いた雰囲気のものを選んでみた。
「霧崎」
名前を呼ばれて振り向くと、そこには駅前に止めた車から降りてくる久我さんの姿。
彼は、黒いVネックシャツにデニムととてもシンプルな格好だ。
けれど、整った顔とすらりとしたスタイルはそれだけでもう芸能人のようにキマっていて、胸がぎゅっと掴まれた。
普段のきっちりとしたスーツ姿とのギャップがまたいい……!
「悪い、待たせたか?」
「いえ!今ちょうど来たところです」
「今、ねぇ……ずっと熱心にショーケース見てたみたいだけど」
「って、見てたんですか!?ひどい!」
見られていたとは思わず、恥ずかしさに声を大きくする。
久我さんはそんな私を見ておかしそうに笑った。
「身なり気にして直してる姿がかわいかったから、つい見てた」
「かわ……!?」
か、かわいかった!?
彼がさらりと発した言葉があまりにもストレートすぎて、頬がボッと熱くなる。
それを見てよけいおかしそうに笑うと、久我さんは車の助手席のドアを開けた。