冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「あっ、キャラクターの着ぐるみがいますよ!写真撮りましょ!」
「はいはい」
たまたま近くを通ったクマのキャラクターを呼び止めて、私と久我さんは写真を撮ってもらった。
スマートフォンに保存された写真を見ると、満面の笑みの私と、ポーズを決めるクマ、その隣には真顔の久我さんがいる。
「あはは、久我さんこういうときも怖い顔!」
「そうか?いつも通りの顔だろ」
「そのいつも通りがそもそも怖いんですよ」
そんな会話を笑ってしながら、また自然に手を繋いで歩き出す。
楽しいな。まるで、本物の恋人同士みたいと錯覚してしまう。
久我さんも私のことを好きでいてくれて、互いの心がここにあるみたい。
あとで虚しくなるだけの想像だとわかっていても、それでもやっぱり思ってしまう。
『好き』の言葉に、彼も同じ言葉で応えてくれたらいいのに、なんて。
園内もひと通り回り終わったところで、私たちは食事を済ませてから休憩がてら近くのショップを見ていた。
「おみやげ、なにか買っていくか?」
「はい、部署のみんなにお菓子でも買っていこうかなって思ってるんですけど」
ぬいぐるみやキーホルダーなどのグッズが売っているお店を見た流れで、目に入ったのは隣のアクセサリーショップだ。
このテーマパークのキャラクターたちをモチーフにしたジュエリーを扱っているらしく、店頭のショーケースにはブレスレットやネックレスなど高級感のあるアクセサリーがディスプレイされている。
その中のひとつ、人気のマーメイドをモチーフにしたネックレスが目に入った。