冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「かわいい……」
思わず声に出てしまうのもそのはず。
それは、小さなハートにシェルの飾りやグリーンのストーン、さらに小さなダイヤがついたネックレス。
数センチのトップにマーメイドの世界観が詰め込まれており、なんともかわいらしい。
「どうかしたか?」
「これ、かわいいなって」
ショーケースをまじまじと見ていた私に、久我さんも同じ方向を見る。
「マーメイド……そういえば、ここのキャラクターにもいたな」
「はい。童話の人魚姫を元にしたキャラクターなんですよ」
近くのショップに並ぶマーメイドのぬいぐるみを指さし言う。
「私、童話は人魚姫が一番好きなんですよね」
「なんでだ?あれ、結局報われずに泡になる悲しい話だろ」
「子供の頃は私もそう思ってたんですけど」
子供の頃、お母さんが読んでくれた人魚姫の話。
王子に恋をした人魚姫は、声と引き換えに人間になるけれど、王子は他の女性と結婚してしまう。
王子の命を奪えば泡にならないと知らされながらも、人魚姫はそれをせず泡になることを選んだ。
それを聞いて、なんて悲しい話だろうと思った。
けど、大人になるにつれて感じ方は少し変わっていった。
「人魚姫は自分が消えるとわかっていても、好きな人の命を選んだんです。それって、とっても勇気がいることだし、なによりも強い愛だと思います」