冷徹部長の溺愛の餌食になりました



「この分だとパレードは中止ですかね」

「だろうな。やまないようなら運休のアトラクションも出てくるだろうし……そろそろ行くか」



そうだよね、もういい時間だし……残念だけど、帰る時間だ。

わかっていてももっと一緒にいたかったな、とつい落ち込んでしまう。すると、久我さんはそんな私の頭をぽんぽんと撫でた。



「この後、うち来るか?」

「え……?」

「まだ帰るには早いだろ。うちで夕飯くらい食べていけよ」



すっかり、もう帰るものだと思っていた。けど、そうじゃなくて……まだ一緒にいていいんだ。

久我さんからのその提案が嬉しくて、私は彼の背中に腕を回してぎゅっと抱きつく。



「わ、なんだよ。いきなり」

「行きます!久我さんの家!行きたいです!」

「わかったわかった」



突然の私からの愛情表現に、久我さんは戸惑いながら笑った。



それから私たちはテーマパークを出て、車で久我さんの家へと向かった。

以前も一度来た、恵比寿にあるマンション。そこは改めて見ても大きく、高級感に圧倒される。

自然な足取りでエントランスを抜ける彼に続いて私も歩き、エレベーターで13階の135号室へ向かった。



久我さんがドアを開け、家の中に通してくれる。

それに促されるように玄関に一歩踏み込むと、室内はまだ新築の香りがした。


この前は久我さんを支えながら来たから香りひとつじっくりと感じることもなかった。



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